世界は “初めて” で満ちている

ふと夜中に目が覚めたとき。
腕を下にして寝てたせいで腕の感覚が無くなっていることがある。
動かせないし、触ってみても自分の腕のような気がしないし、冷たくなっているように思える。 寝ぼけた頭で僕は焦る。
これはもう俺の腕は使い物にならないかもしれない……
明日から仕事どうしようか。
いや、でも大丈夫なはずだ。
このパターン、前にもあったし……
などと逡巡しているうちに徐々に感覚が戻ってきて、腕が動くようになってくる。
ほら大丈夫だった…… とホッと尻を撫で下ろす。
僕はこの感覚を取り戻していく過程が好きだ。
絶望から希望へと気持ちを切り替え、そこから這い上がっていく様が気持ちいい。
これは狙って出来るものではない。
以前にも同じパターンがあったと書いたが、思い返しても47年の半生で三、四回ってのが関の山。
だからこそ貴重な体験なのだろう。
ちなみに長時間正座をした後、立ち上がろうとした瞬間に倒れこむのも好きだ。
これも、我が人生においてまだ数回しか体験していない。
これは、狙えば何度でも味わえるものだが自ら望んでその状況を作り出す気はない。
だからこそ貴重な体験だと言えるのだろう。
我が家にネコがやってきて五ヶ月が経とうとしている。 今回のチャンスを逃したら、もしかしたら一生ネコを飼うことはなかったかもしれない。
そう思うと、ネコを飼いたいと言い出した息子に感謝しなくてはだ。
幾つになっても、まだまだ初めての体験ってのは出来るのだなとしみじみ感じ入った。
これから、どんな初めてが待っているのだろうか。
世界は “初めて” で満ちている。

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