そんなことを思った。

ぼんやりテレビを眺めていたら、若かりし頃に世界百数十カ国を旅したんだという人が出てて「あちこち旅をして、いろんな物事を見聞きし、貧しい方々を見てきたけど『貧しいんだな』ということしかわからなかった……」みたいなこと言っていた。
「わからなかった」って正直だなと思った。「わからない」ってことを「わかる」って大事だなと思った。わかったふり、知ったかぶり、そういうのなるべくしたくないなと思った。

先週末、ものすごい台風が来た。おそらく四十八年の人生で一番猛烈な台風だったろう。先月の台風15号の猛風によって傾いてしまった我が家のオリーブ。造園屋さんが剪定し補強して立て直してくれたのだが、予報では瞬間最大風速60mとか言ってて、これはもうまたやられてしまうんじゃないかと不安に慄いていたのだが、台風去りし後もビクともせず直立不動。朝日の中、その勇姿を眺めたとき、拝みたくなるような気持ちに駆られた。でも拝まなかった。

台風一過の青空の下。安堵の気持ちとあいまって、たまらなく気持ち良かったのだが、被災した方々のことを思うと罪悪感を覚えた。以前は、どこか遠くの人々のことなどかまうことなかったのだが、いつの間にやらそういう気持ちが芽生えるようになっていた。人はもしかしたらこれを成長と呼ぶのかもしれないなと思った。

股旅。

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