それもまた “もののあはれ”

昨日のこと。
お客さんを外まで見送った後、ふと道路上にハラビロカマキリを発見。
こりゃ息子が喜ぶぞと捕まえようとしたのだが、激しい抵抗に遭った。
ガブリと指先を噛まれて思い直した。

このまま捕まえるのも可哀想だな。
どうせ息子のことだから、容赦なくオオカマキリを同じ飼育箱にぶち込むだろうし……それにどうだい?こんなにまで抗ってさ。
お前の思うようには絶対にさせない!
って気概を大いに感じるじゃないか……と。

ってことで、ハラビロカマキリを解き放った。
生きろ!ってね。

で小一時間が経ち、再びお客さんの見送りに外に出てみて愕然とした。
さっきのハラビロカマキリが、容赦なくペシャンコに潰されていたのだ。

クルマ?自転車?それとも靴で直に?

何にせよ、私が解き放ったハラビロカマキリは絶命していたんだった。

私の心中に冷たい風が吹いた。
なんて無情で無常なのだろうか。
もしかしたら、あのとき私が捕えて息子に渡した方が、ハラビロカマキリにとっては良い未来があったかも知れない。
息子は、オオカマキリをぶち込んだりせず、暫し観察した後、安全な場所に逃してやったかも知れない。

何だかね、自分ごときの行いのせいで、一つの命の行方が左右されてしまう様を目の当たりにしてショックだったのさ。
こんなのはありふれた日常なのだろうけども、その日常の無常さに気分はもうジャン・ヴァルジャンだったのさ。

今、このしょうもない駄文を書きながら聴いているのは、大好きなバンド “クルアンビン” がYouTube 上にアップしている彼らが選曲した mix だ。
これがもう最高に良くて、営業時間中もよく流しているのだが、何が最高って見事なくらいに知っている曲が一つもないところ。

ときどき「オレもまぁそれなりの数の音楽に触れてたりするんじゃね?あはん?」なんて自惚れてたりしてだけど、もう全然ダメじゃん!
よくもまあそんな浅さで一瞬でも過信出来たもんだね!
と気持ちいいくらいに、自分の薄っぺらさを痛感出来るのだ。

ともあれ、気持ちが良い曲ばかりが流れて来るんだけど、それが全部知らない曲って、何故か何故だかとても神聖な気持ちになれるもんなんだな〜ってね。
それに気がつけたんですよ。
これはとても嬉しいことなんです。

股旅。

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