これでもちゃんと学んでいるのである

近頃、少年時代にどっぷりハマっていたプラモデル熱が再燃しているのです。

自ずと、仕事している最中の会話もプラモデル関連の話題がついつい出てしまうのですが、我がDOODLIN’ BARBER SHOP のお客さんたちが、これまたかつてのプラモ小僧だった方々が沢山いらっしゃいましてね。

私と同じように、

模型屋やプラモデル売り場があればフラフラと寄ってしまい、いつか作るんだぜと意気込んで買ってしまい、でも作るチャンスもないまま棚に積まれ、押し入れの奥に入れられたままほ、十数年経ってしまったじゃないか!

って方々ばかりなんですね。
それはもう“me too” の嵐なわけです。

で、

十数年そのままだったものが、これから作れるようになる気も全然しないし、それなら床屋のオッサンにあげてしまおう!
息子さんも一緒にハマりまくってるみたいだしね!

って展開が相次いでましてね。
でいただくからには、誠心誠意込めて作らなきゃとせっせと精を出しているわけです。
最高ですよ、全くもう。

写真の1/100 MG アッガイもまた お客さんからいただいたもので、(私は水陸両用モビルスーツは自由に楽しく塗りたい派)はてさてどんな色にしようかな〜と思案していたら、息子が「床屋の色にしなよ!」と熱い提案をしてくれまして。

それは良いぜ!

と塗ってみたのでした。

私的には、会心の出来ですよ。
作って楽しいし、見て楽しいのだからムテキング。
このアッガイのキットをくれたあのお客さんも喜んでいただけることでしょう。

思い返せば、レコードでも同じようなことがよくあります。
聴かなくなったレコードを、うちの店に持ってきてくれるお客さんたちがいるんです。

この床屋のオッサンに渡しておけば……

って似通った思いがそこにあるんでしょうね。
多分きっと。

たかだかプラモデルと侮るなかれ。
私はプラモデル制作を通して、たくさんのことを学んでおりますよ。

忘れていた何か。
新しい発見。
あらためて感じ入る大切なこと。

プラモデルが教えてくれてます。
ありがとう、プラモ!
プラモデルをくださった方々、どうもありがとうございます!

パーっと視界が開く、この感じ。

今年三月他界した音楽評論家の松村雄策さん最後のエッセイ集『僕の樹には誰もいない』が届いた。

亡くなる直前に書かれたものも収録されているそうで、この『僕の樹には誰もいない』というタイトルも、亡くなる二ヶ月前に「タイトルはもう決めてるんだぜ!」と電話で伝えられたもので、10代の頃から松村さんの文章に触れていた元テッペー少年としては、これは読んでおくべきなんじゃ?どう?

と思ったから、発売の情報を聞いたとき、すぐさま予約したのだ。

高校生のとき松村さんが描いた小説『苺畑の午前五時』を読み、自分が今青春の真っ只中にいることを自覚はしたのだが、まるで無駄で無為な日々を過ごすことしか出来てない自分に落ち込んだりしたんだった。

でも、今となってみれば、あれこそが青春の日々だったんだなぁと思う。
所詮自分は器用にサラっとスタイリッシュになんか生きられないのだということがわかったからである。
この “わかった” ってことが重要。

で、近頃「これからどう生きるべかな〜」なんて、鼻くそほじりながら嘆息ばかりしてたのだが、この本には何かヒントが載ってそうな予感がムンムンしている。

答えではない。
あくまでヒント。

これがミソ。

先日、自分より五つほど年長のお客さんと話してて、いきなりパーっと視界が広がったような気分になった。
そのお客さんが、自由気ままで、でもちゃんと責任も自覚してて、楽はせず、でも楽しむことを大切にしてて……

で、なんか話してたら急にビースティ・ボーイズのことを思い出してさ。

ああ、これだ!

って思ったの。
ああいう感じを目指せばいいんだって。
と言っても、全盛期じゃなくて、メンバーの一人が亡くなってしまった後、音楽活動休止してからのビースティだ。

残されたメンバーの年の重ね方を見て、ああこんな感じいいなぁと漠然と感じていたことが明瞭になったと言えば良いのか。

なんだか上手く言えなくてもどかしいのだが、まぁつまりそんな感じなのである。

で、それはとても幸福なことだと思っている。

では股旅

つまりそういうこと

MG 1/100 モデルのザクを何色で塗ればイイかね〜
と息子に相談したら

「DOODLIN’ の色がいいよ!」

と言ってくれまして。
想像してみたら、こりゃ良いのが出来るんじゃないの!

って確信したので、今せっせと DOODLIN’ カラー仕様のザクを作っているのです。

こういうプラモデルの楽しみ方もあるんだなぁと目から鱗が落ちまくりました。
子供の自由な発想力には、シビれさせられますね。

外壁のブルーグレー、屋根のレッドブラウン、窓枠のオフホワイト、それと DOODLIN’ BARBER SHOP のイメージカラーでもあるネイビーを配した “MS-06J ZAKU Ⅱ” 。
うむ、絶対カッコいいじゃないの。 

こうやって、息子から影響を受けること、学ぶこと、考えさせられること、そういうこと事が少しずつ増えていくのだろうなぁ。
うむ、ありがたし。

DOODLIN’ BARBER SHOP 目出たく十八周年を迎えられました

本日。
目出たいことに我がDOODLIN’ BARBER SHOP が、さりげなく開店十八周年を迎えました。世間では、どうやら十八歳で成人ってことにしようぜってなったようで、それはつまりDOODLIN’ も成人ってことか〜なんて、ちょっとしみじみしたりもしてます。

月日は百代の過客にしてとはよく言ったもので、ホントまあ思い返せばチチンプイプイ。
それはもう、あっと言う間の十八年でございました。

これもあれも何もかも、皆々様の暖かいお力添えとご指導とご愛顧と、えっとそれから、ご支援のお蔭と心より御礼申し上げます。
どうもありがとうございます!

今日は生憎の天気ではありますが、感謝の気持ちではち切れんばかりに一日を過ごそうと思います。

ってことで、とりあえず成人一枚目に選んだのは、クルアンビンの 3rd アルバムMordechai” 。
このバンド、60~70年代のタイ・ファンクに影響を受けた異国情緒溢れるサウンドが特徴で、ここ数年ハマりにハマりまくっているのですが、そのサウンドが醸し出す空気感は、私が目指したいものに似てましてね。
まさに、今日という日に相応しいナイスチョイスだなと自惚れております。

私自身は、三十一年前に一応成人させていただいてるのですが、商いをするってのは、それでまた別の(だけど自分自身でもある)成人の日を迎えられるのだから、有り難いことですよね。
目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず、人の心を見つめつづける。
そんな時代おくれの男になりたいし、そんな店にしていきたいな〜とぼんやり決意したのでした。

でも、たかがされど十八年。
開店当時に生まれたコがすでに高校三年生になってるんですもんね。
三十三歳だった私は五十一歳になりました。
いろいろたくさん諸々様々ありました。
十八周年。
立派です。
応援し支えてくださった皆々様、そして愛しき日々を支えてくれた妻さんと息子に感謝感謝です。

そんなわけで、今後ともヨロシクお願いします。
DOODLIN’ は、今日も良い音楽とグッドバイブレーションが流れてますよ。

回りに溢れる愛に感謝します。
2022年10月5日 
DOODLIN’ BARBER SHOP 店主 高崎哲平

小さな芸術家

「ヘッドフォンに色塗っていい?」

息子にそう訊かれたとき、正直最初は「え……出来たらやらないで欲しいんだけど……」と思ったのですが、懇願するような息子の眼差しビームを浴び、まぁ別にいいかと思い直して許可することにしたのでした。

やった〜!

と息子は、はしゃぎ、躊躇なく下書きなしでサササと塗り始めるのをハラハラ眺めていたのですが、

あれれ?これ結構良いかも!

と風向きが変わり、出来上がったのを見たら、最初は気が進まなかった自分の狭量さが情けなくなったのでした。
だって凄く良いですもの。
なんかこう、気持ちがパッと明るくなったんですもの。

私の好きなアニメ(というか絵本でもある)の『おべとも学園』の登場人物である “ぼうしくん” ってキャラクターがおりまして。

“ぼうしくん” は飄々としてて無口で、でも絵がとても上手でしてね。
友だちが落ち込んでいるときや、怒っているときに、サササと絵を描いて、場を和ませ、人を慰め、笑顔を引き出し、なんかちょっと優しい気持ちにさせるんです。

私は、それこそが “芸術家” の役割なんだろうな〜と、ぼんやり “ぼうしくん” から学んだんです。

で、今回の息子のヘッドフォンアレンジを見て、私は息子と “ぼうしくん” を照らし合わせたのでした。

こういうこと、これからも沢山して欲しいな。
床屋のオッサンは、そんなワガママな思いを密かに抱いたのでした。

股旅。