音楽はマジックを呼ぶ

空き時間。
外は灼熱、僕はぼんやりと砂原良徳の名盤『LOVE BEAT』を聴いている。

このアルバム、リリースから今年で20周年ってことで、待望のアナログ盤での再発もあると知りテンション駄々上がりしているわけなのだが、と同時に「いやちょっと待てよ、20周年って……」と絶句してしまった。

その音と音の隙間にある美学に酔いしれ、世の中にこんな音楽があるんだ、まさにタイトル通り「LOVE BEAT」
だぜ!と感嘆しまくってから20年もの月日が流れてたいたなんて……マジか……マジなんだよ。

誰かがこんなことを言ってたのを思い出した。
小学生は10分間の休憩時間に全力でドッチボールをする。
でも、大人は一息ついてぼんやりと何もしないうちに10分が過ぎ去ってしまうと。
絶対同じ「10分」ではないと思うのだ。

10歳から30歳までの20年間と、30歳から50歳までの20年間も圧倒的に明らかに違うと感じる。
まあ、好きなのは30歳からの20年の方なんで別にいいんだけども……なんてこれを言っちゃおしまいか。

で、これからの20年はどうなるのだろうか。

70年なら一瞬の夢さ……

そう歌ったブルーズマンがいたが、これも多分本当のことなんだろう。

若者が嘆いていた。

「若いときに聴いていたミュージシャンが未だに現役バリバリで羨ましいっす。
自分たちの世代のミュージシャンで、20年後も一線でやっている人いなさそうで……」と。

これはまあ、その時になってみないとわからないことなんで、なんとも言えないのだが、きっと、いや絶対聴き継がれ続ける音楽はあるから、自分が好きな曲がそうなるといいですねと言っておいた。

20年前、初めて『LOVE BEAT』を聴いたとき。
これは絶対数十年後も聴かれ続ける名作だ!
って思ったりしなかった。
今の若者はそういう着眼点で物事を見つめているのかもな〜なんてぼんやり考えた。

うん、何事もぼんやりが良いと思う。
俄然、ぼんやりを推奨する。

ホント時の流れっっつーのは一体なんなんだろうね。

五十路ラプソディ

“今年はものすごく早い梅雨入りをするぜ、気をつけな!”

って鼻息荒い話もありましたが、関東甲信の梅雨入りはまだまだ先になりそうだとのこと。
外は真夏日。
そして、にわか雨の気配が近づいている。
そんな隙をついてグイグイ伸びてきている芝生ちゃんたちをそろそろカットしなくてはですね。
これもまた床屋の仕事なのである。

50歳ってどんな感じですか?

近々四十路に突入するお客さんが、少年のようなキラキラした眼差しで訊くのです。

私は眩しそうに応えます。

“そうですね……
40歳になったときとは明らかに違う何かがありますね。
でも、その何かってのはイイものですよ。
なんかこう、ちょっと楽になるって言うか開き直れるような、それでかつ皆んなが大目に見てくれるようになった……そんな感じです。”

お客さんは、サンドウィッチマンの富澤たけしさんのようにこう言うのでした。

“ちょっと何言ってるか分からないんですけど……”

ですよね〜!
まぁつまりですね。
こんな店でも十数年続けていると、それなりの何かがあるんじゃないか?
と思ってもらえるってことです。

それプラス店主が50歳になったぜってのもあって、謎の説得力が生まれたのをビンビン感じているわけです。

例えばです。
店内BGMで「これはちょっとどうなの?」って曲が流れてたとしてもですね。

「このオッサンが選曲したなら、これはもしかして今イケてる音なんじゃ?まさか?」

とスーパーポジティブな反応をいただけるようなね、そんな感じなんです。

もちろんね、だからと言って調子に乗ったり、図に乗ったり、痛い勘違いはしないように気をつけてます。

ただね、ちょっとは傲慢になった方が良いかなと思ったりもしたりしてます。
謙遜がイヤミに取られたりすることもあるんじゃないかと。

だから、第二次少年期だと思って、この五十代を好奇心の塊になって爆走したいな〜と考えてます。

さてと、芝刈バリカンの充電も完了したようなので、バリバリ刈ってきます。
刈るの結構得意なんで。

誰にも気づかれないマイナーチェンジ

気まぐれに旧店舗時代に愛用していたエプロンを引っ張り出して着てみたら、これが思いのほかハマって、この二、三日着用している。

アップデート?
リニューアル?

まあ、ともかくフレッシュな気分になるのである。

いつの間にやら、エプロン無しでは仕事は出来ないナイスミドルになってしまった。
エプロンをすることが僕の ‘普通’ になったのだ。
結婚前は、Tシャツの下に肌着なんて着てなかったが、今はそれ無しでは落ち着かなくなってしまった。
トイレで用を足すときも、大小問わずシットダウン。
それが ‘普通’ になった。

まあ何が言いたいかっつーと、自分にとっての ‘普通’ なんてものは、しょっちゅう変わる、いや変えられるってことだ。
で、この ‘普通’ が変わるってことが、結構楽しいし面白いし気持ちが良いってことがわかった。

これからの余生。
自分の中での ‘普通’ や、‘当たり前’ になっていることを、ちょっとだけ疑ってみようと思う。

しょうもない話になるが、今僕にとって当たり前となっている仕事時に “adidas campus” を履くっつーのも、ちょっと変えてみようかしらん。
絶好の候補があるのだ。
そんなの履き替えても、誰も何も気づかないだろうけども、だからこそ尊いのだ。

自分だけが知っているマイナーチェンジ。
そういうのを爆発的にさりげなくやっていきたい。
もちろん改悪ではなく改善だ。
五十過ぎてからの人生、そういう楽しみ方があっても良いだろう。
ヤァマン。

わかってもらえるさ

ぼんやりネットニュースを眺めていたら、こんなことが書いてあった。

「Z世代」と呼ばれる今の20代の若者たちは「怒るという感情を持つ人自体がそもそもNG」という傾向が強い。
怒るよりは、改善策を考えたほうが生産的なのに、それでも怒るような人は空気が読めないウツボ野郎だと認定されるのだそうだ。

それから、その世代はSNSで自分の存在を「いいね!」と褒められるのが当たり前になっているから、否定されると「何この人、怖い!バカ!」となると書いてあった。

こりゃ確実に自分は “怖い人” 確定だなぁとしみじみしつつ、でもその気持ちわからなくもないぜと床屋のオッサンは思ったんだった。

私も怒る人怖いし、怒られるの嫌いだもの。
もちろん納得出来る怒りをぶつけられるのは大丈夫。
ちゃんと理解し受け止め反省する。
ただよくわかんない怒りは怖い。
どうした?アーハン?
となる。
でも、それは普通でしょ?

もしZ世代とやらの方々が、どんな怒れる人に対しても「コワッ!」となるのなら、オッサンはそっちの方がよっぽど怖いぜ。

基本「わかってもらえるさ!」の精神でのほほんと生きて来たので、それが通じない世の中になりつつあるのなら、そっと降りよう。

でも通じるよね。
芸術ってそのためにあるんでしょ?
そのために爆発してるんでしょ?

なんか書いててよくわからなくなってきたから、一時撤退する。

さてと、UNDERWORLD でも聴きながら草むしりするかな。

股旅。 

これもまた私の仕事

今季もまたTシャツを作っているのです。

いろいろアイデアはあったのですが、7年程前にマイキー・ドレッド(レゲエ歌手でありプロデューサー)をモチーフにして作ったのを2021年バージョンで復刻させようってことになりまして。

グラフィックはそのままに、屋号である『DOODLIN’』の部分を『BARBERS』に変えてお届けしようかと。

DOODLIN’ に限定せず、床屋を愛し床屋に集まる人々、それはスタッフだけでなくお客さんたちも含めての総称として“BARBERS” ってのはどうだろうか? イイね!
と相成ったわけです。

発案者は、毎回僕のイメージをそれ以上に具現化してくれているデザイナーの長友くん。

なんかこう……

今はかなりコロナ野郎のせいで窮屈な状況下なわけで、そんな世の中だからこそ、少しでも垣根を取り払って前向きに考えられることって重要なんジャマイカってことで、“BARBERS” になったわけです。
うん、とても良いですな。

背面には今年も引き続きこれですかねってことで “Go Slowly” と入れようと思います。
ついウッカリ “Hurry Up!” となってしまいがちになって来てますからね。

使用するボディも決まり、これからカラーバリエーション選択。
良いものが出来そうな気配がムンムシ漂っていますよ。
BARBERS の皆さん、お楽しみに。

こんなこと考えているのが、たまらなく楽しいわけです。
でも、これもまた れっきとした床屋の仕事ですから。

新しく作る mix CD 『reggae beam & funk bomb vol.2』の選曲をするのも床屋の仕事。

庭の草むしりも、この日記を書くのも、全部床屋の仕事なんです。
多分ですけども。

それでは股旅。