今までもこれからも

このアルバム。オリジナル版の発売が1991年の3月ですって。ということは、私の二年目の浪人生活が確定して愕然としてた頃ってことか。


その割には、このアルバムのイメージがキラキラしているのは何でだろう。それは私がまだ十九歳だったからなのかな。二浪突入に落ち込みつつも、まぁ何とかなるっしょ!と思ってたような気もする。


しかし、あのとき。二浪するのが当たり前だと思っていた自分を思い返すと怖い。両親も当然二浪させてくれると思っていたし。全てが甘過ぎて、過去に戻ってあの頃の自分にドロップキックを喰らわせたいくらいだ。


そんないろいろ様々な思いを喚起させる、このスカパラ超初期のライブアルバムなわけだが、先日の「レコードの日」にめでたくも初アナログ化をはたしたのである。
これと最初期の1989年に発売された「黄色いアナログ」が再発され、メジャー1stアルバムの「スカパラ登場」が初アナログ化されたのだった。


これは自慢なのだが「黄色いアナログ」を当時高校三年だった私は池袋WAVEで買っている。

手にとった瞬間、ものすごく興奮したのを覚えている。

ライブにも何度も足を運んだ。「世の中にこんなにカッコイイ大人がいるんだ!オレもいつかこうなるんだぜ!」と鼻息荒くしていた。

まぁともかく、それはもうとんでもなく、私の中で東京スカパラダイスオーケストラの登場はセンセーショナルだったのだ。


あれから三十年。いまだに聴き続けているのだから面白い。

これから三十年。ずっと聴き続けるレコードは一体何かな。


三十年後となると私も七十八歳になっているわけで、そもそもまだ生きているかな。

息子は三十六歳になっているな。もう結婚しているかな。

孫が出来たりしてるかな。

妻さんはまだまだ元気ハツラツで、今と同じく私にハッパかけまくってて欲しいな。

そんな光景のバックでは、きっとステキな音楽が流れていることだろう。

『人生はクローズアップで見ればシリアスだが、ロングショットで見ればコメディだ』って言葉を思い出した。

結構、いつも私のそばで寄り添っている言葉なのよね。


股旅。

欲しいのは一皮剥けた感

所沢市山口にある秘密基地『CVC.MALL』。そこの二階にある多目的スペース SPACE FORREST で毎週水曜日だけ開店する『Bar CLOSED』という店がある。

その第二水曜日、僕はレコード選曲しにお邪魔させてもらっている。一昨日の晩もやらせてもらったのだが、その日がまた殊更イイ空気感に満ちていた。それが何故なのか説明できないのだが、すでに何回もやっているのだが、一昨日の晩にいきなり感じたあの “一皮剥けた感” 。それがなんだか嬉しかったんだったんだった。アレはなんだったんだろうか。

この『CVC.MALL』。最寄駅から徒歩で十五分ぐらいかかるし、「え?何故ここに?」って思わせる場所にあったりで、勝手に共感&親近感を抱かせてもらっている。“たまたま” とか “偶然” 行ける立地ではない。そこに行こうという『意思』が働かない限り辿り着けない場所なのである。

そんな場所で第二水曜日、すなわち月の半ばで、しかも週の半ばという集客を考えるとナンセンスな日に開催するっつーナイスな試みに大いに賛同して、僕はこの企画に参加している。マイナス要素全てに「そこがイイんじゃない!」と言えるようになれたら素敵じゃない!そう思い込んでいるのである。

一昨日の晩は、そんな思いが結実したような気がした。うちの店にも、そんな風が吹いてくることを願っている。

一昨日の選曲テーマは『Night Park』だった。毎回『Bar CLOSED』主宰のテルくんからお題が出され、それに即したレコードを持っていくというのが、また面白い。
テーマに即したレコードだけ。
これがミソ。CD やら PC やらまで持ち込むとなると選択肢が広がり過ぎて、オッサンには処理できなくなるのである。制限があった方が燃えるし萌えるし、そこにドラマが生まれるのだ。こんな気持ちわかるでしょう?

で、今回随分と選曲を褒められた。で、他の褒められたときを思い出してみて、その共通項を探ってみたら、そのどれもがそれほどプランを練ってなくて、ある程度の流れをぼんやり決めて、そこからは「その場の空気感と自分のノリで」とのぞんだときだったとわかった。

いろいろとあまり考えない方がイイ……

そういうことなのだろうな。多分きっと。

で、備忘録的に一昨日のセットリスト。自分的には、ちゃんとテーマである『Night Park』に即しているよなと思い込んでいる。ちょっとこれで MIX CD 作ろうかしらんとも思った。

01. Speedtalk / Underworld02. Luv(sic)pt2 / Shingo 203. Human / Daughter04. The Modern love / The Strokes05. Down The Valley / Not Wonk06. Stubborn Love / The Lumineers07. Stephanie Says / The Velvet Underground08. King Of A One Horse Town / Dan Auerbach09. A Dream Goes On Forever / Debbie Sanders10. Fast Car / Tracey Chapman11. I Can’t Go For That (No Can Do) / Daryl Hall John Oates12. Leave A Tender Moment Alone / Billy Joel13. Luanne / Moacir Santos14. Chateau / Angus & Julia Stone15. Toast 2 Us / Tuxedo16. Peg / Steely Dan17. Every Breath You Take / The Police18. Pounding / Doves19. Starman / David Bowie20. ナイトクルージング / Fishmans

ずっと残るもの

私が子供の頃『山口さんちのツトム君』という歌が流行った。

この歌は何故か何故だか私の心の奥に入り込んだようで、初めて聴いた幼稚園生だったときから四十数年ずっと、ふとした拍子に脳内再生され、それに合わせて口ずさんでしまう不思議な魅力に満ちた歌なのである。

幼馴染みの山口ツトム君がなんだか元気がない。遊ぼうと誘っても「あとで」とつれない返事。大事にしていた三輪車も庭でずぶ濡れ。翌日には元気になったかな「おはよう!」と呼んでも返事がない……どうしたのかな……

そんな歌なのだが、私は歌の後半を覚えてなくて、確か何で山口さんちのツトム君が元気なくなっちゃったのかが歌われていたはずだよな〜なんでだっけ?そうだ!ネットがあるじゃない!

そう思い立ち検索したらチンチンプイプイ。すっかり疑問は解けた。

ツトム君のママが田舎に帰ってしまってたから元気がなかったわけだ。そして歌の最後にはママが戻ってきて、ツトム君は元気を取り戻し歌い手の女の子に摘みたてのイチゴをお土産に持ってくるという甘酸っぱい結末で終わるのだ。

この歌を口ずさむと子供の頃にも甘酸っぱい思いになったのだが、オッサンになった今感じる甘酸っぱさはまた別のものになったのを感じる。

ママ、何で田舎にツトム君を置いて帰ってたのかな……甘酸っぱいぜ!

となってしまっているのだからオッサンになるっつーのは哀しい。

作詞作曲は、みなみらんぼうさん。同じく、らんぼうさんが作詞作曲した東京電力のCMで使われた『僕は三丁目の電柱です』という歌も大好きだった。そういえば、先日この曲を歌っていた山谷初男さんも亡くなってしまったな。何だかいろいろと切ない。時は流れるね。

よし。みなみらんぼうさんのアルバム、探してみよう。

画像は息子が着ていたパーカー。(と長友くんの受賞作品)とてもかっこ良くてお気に入りだったのだが、小さくなってしまった。いたしかたなし。

デザインをしてくれた友人の長友浩之くんが、第11回 “H”ADC 広島アートディレクターズクラブでグランプリを受賞した。勝手ながら、嬉しいしとても誇らしい気持ちに満たされている。長友くんのデザインって、優しくて温かくて丸いのよね。そこが好き。あ、その点がみなみらんぼうさんの歌とちょっと似ているかもな。

長友くん、あらためまして、受賞おめでとうございます!

ちょっとは誇りに思おう

以前にも書いたかもなのだが、私は Toots & the Maytals の “Funky Kingston ” が、その音はもちろん、ジャケットの醸し出すムードが大好きで、こんな音使い & こんな色合いの人生を過ごせたら本望だよな……とこのアルバムと出会ってから十数年ずっとそう思い焦がれているのである。

「ふ〜ん、で、それってどんな人生?」と賢い貴方に訊かれたら、貴方を満足させる言葉は全然出てこないのだけれども、そんなの別にイイじゃない。自分がそう思い込んでいるんだから、それでイイじゃない。

かつての自分だったら、ココでそういう疑問を投げかけてくる相手を納得させるにはどうしたらイイべかな……む〜ん……と本域で思案したもんだったが、年を幾分重ねて図々しくなったのか、今となっては「別にイイじゃない!ファファ〜ン!」と開き直れるようになった。

何がどうなってそうなったのか、コレもまた全然説明できないのだけれども、それもまたイイじゃない!

リリー・フランキーさんがインタビューで

「美大生は、美大以外の大学で得られるものとは違う、もっと美しいもの、もっと豊かなものを得るために美大へ入ったはず。そこで得られるものは社会の一般的なものさしで戦っていくには弱い刀かもしれないけど、美大生にしか持てない刀のはずなんです。だから、それにもっと誇りをもってほしいと思うんですよ……」

と言ってくれてて、なんだかしみじみしてしまった。この “しみじみ” は喜びを伴うものね。“しみじみ” にもいろいろあるのよ。

ほんわかと美大生の端くれであると密かに自分では思っている自分にとっては、とても励まされる言葉だった。

一般社会では全く歯が立たないし役に立たないし、なまくら刀かもだけど、それは持っているよな、確かに。うん、持ってる。

その刀で、自分と店を作ったのかもな。

ちょっとは誇りに思おう。

音を楽しむのである

小学一年生の息子は学校から帰るなり、タッチアンドゴーで遊びに行く。子供たちは困難に立ち向かい、ひたすら遊ぶ。スマートフォンも時計も財布も小銭すらも持たずに飛び出して行く。うらやましい。もう48だからということで、さすがにやらないが。

自分が息子と同じ小学一年生のときはどうだったろうか……だなんて記憶をほじくり返すのが楽しい。まあ、ともかくとことん遊び尽くしていたような記憶だ。宿題なんてなかった。あれ?あったかな。ないな。うん、なかった。

息子は毎日宿題を出されている。まあ、それは悪いことではないし、大した量ではないのだけれども、三年生ぐらいまで宿題はなくてもいいんじゃ?とも思う。

まだ観ている途中(今朝、観てたのだが息子が起きてきて中途で断念)なのだが、『母さんがどんなに僕を嫌いでも』という映画がとても良くて、体の隅々までしみじみ沁み渡っている。

自分でも嫌になったのが、劇中で「もしやこの人が裏切るのでは?」と疑心暗鬼になってしまうところだ。物語の途中で、信じていた人間にひどいことをされて傷つく……そんな展開のものばかり観ていたのだろうな、きっと。

残りあと三十分もないのかな。どうにかハッピーエンドでよろしく願いたい。心底願っている。

「SNS徘徊していてこの曲聞いたら自分的にてっぺーさんのお店が浮かんできたので図々しくもご連絡させていただきました!」

そんなメールがお客さんから届いた。リンクされたURLをクリックすると流れ出したのは極上のシティポップ。(自分的にはトッド・ラングレンっぽいなと)こんな素晴らしい音楽から、うちをイメージしてくれるとは……感無量が止まらない。ありがとうございます。

Sunset Rollercoaster。驚いたのは、これが台湾のアーティストだということだ。世の中には、まだまだ知らない音楽(音楽に限らずだけれども)がいっぱいあるんだな。

自分の半生を振り返ってみて、唯一真っ直ぐに真面目に向きあってきたのは音楽だなとしみじみ感じ入る今日この頃なのである。

それはコレからも継続維持していけたらなと思う。