おっさんず賜物

仕事用シューズを新調した。
ここ数年ずっと愛用している adidas campus 。
コレで連続何足目になるだろう。
 
かつては新物に目がうつりがちだったが、そうではなくなった。
使えなくなったら、また同じものを新調するようになった。
若かりしころは、そういう風にしている人生の先輩たちを見て「偏屈だなぁ」と思っていたが、今は違う。
「コレだ!」と思えるものに出会えたことを誇りに思うようになったのだから、人の気持ちの移ろいというものは面白い。
 
それでもまだまだ自分のケツの青さを自覚せざるを得ないのは、全くの同じものを選べないところだ。
多分、今回のダークブルーで、adidas campus は十足目近くになると思うのだが、それらは全て違う色なのだ。
なんだかほんのり甘い。
こだわりとは到底言えない浅はかさを感じたりもしている。
色も形も全く同じものを三つぐらい所持して、それらをローテーションさせる域まで達したいものである。
 
そこまで愛せるものと、「これコレ、コレなんだよ!」と確信できるものと出会えることの喜びを知れて良かった。
 
コレもオッサンの領域に足を踏み入れた賜物なのだろう。

久しぶりに写真なし日記

約六年ぶりに歯医者に通い始めた。

ここ最近、どうにも気にさわる奥歯の鈍痛があって、そんな話をお客さんとしていたら「違和感があるなら早いうちに行ったほうが良いですよ〜」と的確なアドバイスをされたので、ついでにそのお客さんが行っている歯科医も教えてもらって、即日予約の電話を入れたんだった。
予約を入れた時点で、それほどのものではなかったのだが、なんだか日に日に痛みが増している気がした。
しかし、予約日は一週間も後、今風に言うならば「どんだけ〜!」である。
こうなったらもう、他の歯科医に急患で飛び込んじゃおうかしらん……なんて邪な気持ちが芽生えもしたが、そこはどうにか堪えて予約日当日を迎えたんだったんだった。
歯科衛生士が丁寧に丹念に私の歯をサーチしてくれた。
それから歯科医が現れてデストロイしてくれるっつー寸法だ。
しかし拍子抜けなことに、「うん、良く磨けてますね〜」との御言葉。
いやいや、じゃあこの痛みは?と訊いたら、これは疲れとか季節の変わり目などで抵抗力が落ちたときに、以前の治療痕にできた隙間から細菌が入り込んで炎症を起こしているんだぜとのこと。
コレは虫歯じゃないと言うのだ。
マジか!
今風に言うならば「いかほど〜!」である。
いや、でもココに小さな出来かけの虫歯(全く自覚症状なし!)がありますね〜おっとココに欠けてしまった歯がありますね〜ってことで、今後はその二歯を治療していきましょうとのこと。
もしかしたら10本ぐらい虫歯があるんじゃないかとビクビクしていたので、この結果にはホッと尻を撫で下ろさせてもらった。
結婚して九年弱、思い返せば、それから歯へのケアをそれ以上にするようになったんだったな。
ササッと歯磨きを済ませようものなら、ちゃんと磨いている〜?と妻さん。
彼女と一緒に暮らすことによって、しょうもなかった健康への意識が変わって行くのを感じた。
六年前に歯科医に行ったのも、息子が生まれてくるからというのが切っ掛けだった。
その前に歯を整えておきたいと思ったのだ。
長年気になっていた親知らずも二本抜いて、数ヶ月通っていくつかの虫歯も一掃させた。
そして今回も同じような思いが働いているのを感じる。
順調に行けば、自分はあと一年半で憧れの五十路に突入するわけで、その前にいろいろと整えたいと考えている自分がいる。
手強かった爪白癬も三ヶ月の内服薬服用を完了し、どうにか完全にデストロイ出来たようだ。
そうなると次は歯だろ!ってなるのは自然の流れだと思う。
何かのテレビで誰かが言っていたのだが、七十代の半ばともなると同級生の半分はすでにゴートゥーヘヴンとなっているのだそうだ。
そう言われてみればそうだろうなと、なんだか妙に納得したんだった。
今年の夏が終わってしまうのが、なんだかどうにもセンチメンタルな気分になったのも、人生の折り返し地点を通過し、人生下り坂最高!そう思える年齢にだんだん近づいて来たからなのだろう、多分きっと。
センチメンタルは、今後さらに加速するだろう。
五十路を目前に控えて、心身を整えたい、学びたい、あれもしたいコレもしたいという思いも加速するだろう。
その反面、あれもいらないコレもいらないって感覚も研ぎ澄まされて行くだろう。
こうやって人は年を重ねて行くのだろう。
全部多分きっとだけれども。
なんだか “だろう” 連発の駄文になってしまった。
ごめんなさい。
それでは股旅。

音楽が空気を作る

アレは二十数年前の真夏真っ只中のこと。

免許取立てだった僕らは男三人で友人の父親の愛車SUBARU に乗って伊豆までドライブと洒落込んだんだった。
その道中、CDオートチェンジャーにブチ込まれたのは10枚全て BOB MARLEY 。
延々と流れ続けるレベルミュージックに、身体を心地良く揺らしていたのは僕ともう一人。
ロッキンオン系洋楽ロックを愛した残りの一人が、伊豆に着いたときに漏らした言葉が忘れられない。
「いや〜全然嫌いじゃないけどさ。今日確信したよ。レゲエで人を殺せるな。」
これには笑った。
嫌いとは言わないあたりがヤツっぽかった。
特に目的があるわけでなく伊豆を目指した僕ら。
着いても、どこに寄るでもなく、車内でコンビニのおにぎり食べて仮眠をとって、そのまま帰ったんだった。
金はないが時間だけはありまくったあの頃。
どうでもいい話で笑いあったあの車内。
久しぶりに BOB MARLEY & THE WAILERS の「KAYA」を聴いてみたら、グワングワンとあの日あの時の気怠い空気感が蘇ったんだった。
音楽にはそういう力があるんだよなぁ……とあらためて実感。
すこぶる良い感じだ。

若者のすべて

今この日記を書きながらフジファブリックの 1st アルバムを聴いている。

なんだかんだ聴かずじまいで、ずっと来ちゃったんだけど、不意に聴いてみようと思い立ったのが先日。
正直、初めはピンと来なかった。
フーンコンナカンジカ……
そんなもんだった。
でも、なんだか今ものすごく来ている。
すごく来ている。
三曲めの『陽炎』で凄く来やがった。
鳥肌どころか総毛立った。
何なのこれ?
泣いちゃうかと思ったYO
それと同時に切なくなった。
ボーカルの方が亡くなったのは知っていた。
十年ぐらい前か。
死んじゃっているんだよな。
切ないよね、こういうの。
ここ最近、仕事の空き時間にペラペラめくっているのが『ジョージカックルの WEll WEll WEll』という本。
スローでメローな人生論。
絶対に必要ではないけれど大切にしたい生きるコツ。
そんなことが帯や表紙に書いてある。
こういうの惹かれちゃう。
ずっと前からも、ずっとこれからも。
なんかヒントはないかなといつも探している。
いい教科書はどこかに落ちてないかとあちこちブラブラ探している。
こんな年齢になったというのに、まだまだ教わりたいし、教えてもらいたい。
いい加減、そろそろ教える立場にならなくてはならんのかもだけど、そんなの知らん。
教えて欲しい。
クリント・イーストウッド監督主演の『運び屋』という映画を観たのだけれども、イーストウッド演じる主人公が、やたらとワカゾウたちに「イカれジジイ!」とか言われてて、でもそれに対して「老人を敬え!」だなんて口が裂けても言わない感じで「うるせーぞ”!イカれやろう!」と返しているのを観て「こ、これだ!」と思った。
まだまだ僕は年少の方々にタメ口たたかれると「ぬ?」と眉間にシワが寄ってしまう未熟者なわけで。
ナメられてたり、小馬鹿にされてたりなら嫌だしムカつくし怒るけども、親しみを込めてそういう向き合い方をしてくれるのならば歓迎するぜボーイ!って感じになりたいなと思う。
細かいことを気にすんな。
ジタバタすんな、ホコリが立つぜ。
そうありたいもんである。
まだまだまだまだその道は長く険しいけれども。
さてと。
こうなったらフジファブリックの『若者のすべて』でも聴くかな。
猛烈台風が過ぎ去った夏の終わりに相応しい名曲だ。

大丈夫。世界は、まだ美しい。

学校に行く直前になると「行きたくないな……」とむずかる息子。

はてさてどうしたらいいかと思案していたら、妻さんが「今日は図工があるじゃない!」と一言。
そしたら、みるみる息子の表情が曇り空から天晴れに。
「楽しみ〜」
だなんてゴキゲンで出て行ったから驚いた。
そうなのだ。
学校行けば楽しいことがあるんだぜ〜ということをイメージさせなくてはなのだ。
そんなことをチチンプイプイとやってのける妻さんスゴイぞ。
おまけに、息子が育てている朝顔たちが見事に花咲いていて、それも息子のゴキゲンに拍車をかけてくれた。
コレであいつはさらにルンルンだ。
小学一年生の思考はいたってシンプル。
シンプルゆえに難しく感じてしまうのは、自分がオッサンになってしまったからだろう。
何しろいちいち面倒くさく考えてしまうのは中年の悪い傾向だ。
そんなとき子供のシンプルさ加減には瞠目させられる。
時には感動的ですらある。
本当は、ほとんどのことがシンプルな思考と行動を持ってすればクリアできることなのだろう。
それを一度忘れてしまって、おっとそうだったなと原点に立ち返ることにきっと意味があるのだと思う。
最初から最後まで何の迷いもなくシンプル街道を突っ走っていたら、それは多分きっとアホウだろう。
学生時代の後輩が主催する Groovetube FES を紹介している記事を読んでいたら「NOT WONK」という若手バンドの動画がリンクされていて、何気なく聴いてみたらそれはもう驚いたんだった。
何だこれは!
まさに度肝を抜かれたとはこのことだった。
北海道苫小牧出身の3ピースバンドで、メンバー全員まだ二十代半ばだそう。
こんなに若いのに何がどうなったらこんな音を紡げるようになって行くのだろうか。
大丈夫。
世界は、まだ美しい。
そう思った。