なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん

中学時代から三十数年読み続けてきた本が完結した。
執筆開始から三十七年。
私が読み始めたのはそれから数年後。
確かすでに第2章まで文庫化されていたと記憶している。
それが昨年の秋に第9章で完結した。
読み終えてしまうのが惜しくて少しずつ読み進めた。
終わりが近づくにつれて感情が昂ぶった。

 

 

一人の男の人生を描いた物語。
最後その男が死んで物語は終わった。
わかってはいたが、自分でも想像していた以上にこみ上げるものがあった。
涙も出た。
たかが小説なのに、こんなにも心うち震わせられた。
この作品に出会えてよかった。
三十数年、次章が発売されるのを心待ちにしてきた。
これから、このように向き合える、付き合える作品と出会うことはないだろう。
この本との出会いは私の人生の宝となった。

 

 

その作品の主人公が、二十歳になった息子にこう語る場面がある。

 

 

『お天道さまばっかり追いかけるなよ。

わしは若い頃からお天道さまばっかり追いかけて失敗した。
お天道さまは動いちょるんじゃ。
ここにいま日が当たっちょるけん、ここに坐ろうと思うたら、坐った途端にもうそこは影になっちょる。
慌ててお天道さまの光を追って、いまおったところから動いて、日の光のところへとやっと辿り着いたら、またすぐにそこは影になった。
そんなことばかり繰り返してきたんじゃ。
じっと待っちょったら、お天道さまは戻ってくる。
お前は、ここと居場所を決めたら、雨が降ろうが氷が降ろうが、動くな。
春夏秋冬はあっても、お天道さまは必ずまたお前を照らす……』

 

 

解釈は自由だ。
場所と考えてもいい、仕事と考えてもいい、人間関係と捉えてもいい。
いろいろ様々なことに通ずる教えだと思う。
この言葉を私は手前勝手に自分への言葉でもあると受け止めることにした。

 

 

この物語には無数のダメな人間が登場した。
ダメな奴がダメなまま終わるエピソードばかりだった。
主人公は信じた人間に裏切られ続ける人生だった。
キレイごとなど皆無だった。
でも、希望がないわけじゃない。
そこにちゃんと作者の思いやりに満ちたまなざしがあることを私は感じた。
最悪な事態に包まれても、そばにいてくれる人が必ずいる。
手を差し伸べてくれる人がいるということも描いていたからだ。

 

 

人にはそれぞれ事情がある……

 

 

そう肝に銘じて、許せない人間を許せってことではない。
そう思うことによって、自分自身がちょっとだけ救われるのだ。

 

 

「なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん……」

 

 

主人公の口癖であり座右の銘であったこの言葉を私自身の座右の銘にもしよう。

 

 

敢えて作品名は明かさなかった。
まだまだいっぱい話したいことがあるので、お店にいらしたときにでも続きを話しましょう。

 

 

それではまた。

昨日、月曜日のこと。

昨日、月曜日のこと。

 

 

早朝、昨晩WOWOWで放送されたのを録画しておいた竹原ピストルの武道館ライブを観る。
一曲目は「オールドルーキー」。

 

♪あの頃は。。あの頃は。。ってやってりゃあ そりゃあ酒も旨くなるさ
だけど俺はやめたんだ
そういうのはもうやめたんだ……♪

 

 

この曲の歌詞のこの一節にいつも胸を打たれる。
けれど今の気分じゃないなと観るのをやめる。

 

 

 

愛車のブレーキの調子が良くないので世話になっているクルマ屋に行
く。
店頭に置いてあったアバルトのフィアットにしばし見とれる。
毎度のごとく代車の国産車の高性能っぷりに驚く。
年末に自分で選曲したMIX CDを聴き、我ながらなかなかイイじゃないかと自画自賛する。

 

 

 

帰宅し、なんとなく確定申告の準備に取り掛かる。
それも長続きせず、読みかけだった本を手に取る。
が、それも長続きせずぼんやりと時間が過ぎ去る。

 

 

 

ぼんやりと先週の兄の誕生日に贈った『BLUE GIANT』の全10巻セットを兄はどう読むのだろうかと思案する。

 

 

 

息子は幼稚園なので妻さんと二人で昼食。
息子のことは大好きだが、二人で過ごす時間は穏やかで安らかな時間なので感謝して過ごすようにしている。
息子のことは大好きだが。

 

 

幼稚園から帰った息子を連れて福生に行く。
床屋さんのイベント。
友人たちが審査員をするので顔を出す。
会場前にあるリリーフランキーさんが武蔵美の学生時代に描いた壁画を眺める。
しかしこの建物も近々取り壊すかも知れないらしい。
そして保存しようという運動もあるらしい。
当のリリーさんは感傷的にもならず軽く「イイんじゃない」と言いそう。
でも、言わなそうでもある。

 

 

 

そこにあることが当たり前だったものがなくなるのは寂しいものだ。
じゃあ記念にと息子を壁画の前に立たせて写真を撮ろうとしたのだが、クルマにププッとクラクションを鳴らされて断念。
いや、ここ別に邪魔じゃないでしょと一瞬思うも顔に出すのを我慢する。

 

 

 

会場に入るが音のデカさに息子がビビる。
ヒゲ強面の多さに息子がビビる。
おまけに親父もビビる。
みんな優しくてイイ人ばかりなのだろうけども、見かけは正直怖い。
自分は違うぜと思っているが、多分僕もガチムチ強面なのだろう。

 

 

 

隣駅である牛浜駅前にある FUSSA GENERAL STORE に向かう。

お目当ては GUNG HO の ファティーグパンツ。
ずっと仕事用に欲しかったパンツなのだが、これは今まで流通していたストレートとは違って、ゆとりのあるワタリから少し強めにテーパードしていくタイプ。
イイじゃない。
気に入った。
先ほどとは打って変わって、息子は大はしゃぎ。
FUSSA GENERAL STORE の店主 閏間くんはやんわりムードだからかな。

 

 

 

帰り道のBGMは息子のリクエストでザ・クロマニヨンズの『GUMBO INFERNO』。
中でも、一曲目の「旅立ちはネアンデルタール」が息子のお気に入り。
その道すがらクルマ屋から見積もりが出たとの報告電話。
なかなか可愛らしい値段でほくそ笑む。
もう二、三日は代車の国産車にお世話になることになった。
ちょうどその二、三日で国産車の高性能っぷりに飽きてくるから面白い。

 

 

 

こうやって書いてみると、とても充実した一日だったっぽいのだが、なんだかちょっと物足りないと感じるのはナゼだろうか。
人は、多分きっと、その物足りなさを抱いたまま日々を過ごすのがベリー最高にちょうど良い塩梅なのだと思う。

 

 

 

そして股旅をする。

手掛かりになるのは 薄い月明かり

昨夜、西所沢 C.V.C MALL 二階 SPACE FORREST で「BAR CLOSED」でレコードセレクターをしてきました。
久しぶりだったので心地よい緊張感の塊になっていましたが、一夜明けた今は心地よい疲労感に包まれてます。
足を運んでくださった皆さま、ありがとうございました。

 

 

十数年 DOODLIN’ BARBER SHOP に通ってくださっているお客さんが来てくれまして。
僕の選曲から、今まで店だけの付き合いだけではわからなかった僕の人間性が垣間見えた。それがとても良かったし嬉しかった。これからはまた違ったスタンスと目線で接することが出来る!
てなことを言ってくれまして。
ああ、やって良かったなぁとしみじみ思ったのでした。

 

 

そうなんです。
たかが選曲だとお思いの方もいるでしょうが、そこから人間性、果ては性癖まで垣間見えてしまうことがあるのです。
そこが不思議で面白い。
僕はレコードのみで選曲したのですが、それもまたある意味性癖と言えるかも知れないな……なんて考えるとちょっと怖くもありますが、ともかくまあそういうことなわけです。

 

 

 

近頃、よくTHE BLUE HEARTS のアルバム『STICK OUT』を聴いているのです。
発売当初は、あまり馴染めなくてあまり聴いてこなかったアルバムなのですが、ここに来て僕のハートに急接近。
そしてすぐさまフォーリンラブと相成ったわけなのです。

 

 

そもそもアルバム終盤の「月の爆撃機」からラストを飾る「1000のバイオリン」と云う劇的な流れを前にして、よく馴染めなかったな若僧のオレ!と地団駄を踏みまくってしまいます。
それもまた若さゆえの過ちなのかもしれませんが、図々しいこっちゃなと我ながら呆れてしまうわけです。

 

 

来月六歳になる息子も「1000のバイオリン」がお気に入りのようでして。
中でも歌詞の中にある ♪楽しいことをたくさんしたい♪ ♪面白いことをたくさんしたい♪ が彼には響くようで、こう僕に言うのです。

 

 

「この歌を歌っているヒロトは子供の頃、楽しいこと面白いことをたくさんしてたのかなぁ。オレもしたい!」

 

 

 

なんかそれを聞いて床屋のおっさんはグッと来てしまったのでした。

 

 

“細かいことを考えて悩むことがいかに無意味かっていうことは、多くの音楽が表現している……”

 

 

これはリリー・フランキーさんの言葉なのですが、ホントその通りだなぁと。
音楽の力と云うのを再び実感しまくりの今日この頃なわけです。

 

 

 

さてと。
そろそろ仕事に取り掛かりましょうかね。
昨夜、セレクトした音楽を流しながら。

 

 

股旅。

ナイスミドル参上

「和歌山毒物カレー事件」があったとき。
一人の女子中学生が夏休みの宿題で「カレーは腐らないから食中毒じゃないはず。毒物混入では」と推理して注目をされていたことを思い出した。
当時、私は彼女の推理を読み「なるほど〜!このコは将来一角の人物になるんじゃないか?」と感心したんだった。

 

 

そんなことを昨夜ふと思い出し、ひょっとしたら今彼女は取材時に「将来は医者になりたい」みたいなことを言ってたからホントに医者になっちゃってたりなんかしちゃったりして……

 

 

と鼻息荒く検索してみたのだが、彼女は高校を中退してその後どうしたかは不明、しかもあの推理自体が彼女の父親の入れ知恵だったのではと云う疑惑もある……なんつー結果しか出てこなくて、私は「なんだかな〜」と少ししょんぼりしたんだった。
知らないままの方がよかったぜ。
勝手ながらさ。

 

 

それともう一つ。
テレビで立山連峰が映し出されているのを見て、ふと私が小学五年生のときに父と二人で立山連峰の雄山(標高3003m)に登ったことを思い出したんだった。
いろいろと詳細を思い出し巡らせているうちに「あ!」と気づいた。

 

 

あのときの父は今の私と同い年だったのだ。
酒飲みで唯我独尊ぶりが激しい父であったが、今の自分よりずっとずっと大人だったなぁ。
今、私が3000m級の山を子供をサポートしながら登るなんて到底出来ない。
すごいぞ、父。

 

 

あんな元気だった父も今や84歳。
自分も父の年齢になる頃には(生きていられればだが)あんな風にどこからどう見ても間違いない完全たる爺さんになるのだなぁとしみじみしてしまった。

 

 

 

そうそう。
明日は、西所沢 C.V.C MALL 二階 SPACE FORREST で「BAR CLOSED」で
レコードセレクトさせていただく日。

 

 

BAR CLOSED 主催でありバーテンも勤めるテルくんが華麗に放ったお題『カカオ』をイメージしてレコードを選ばなくてはなのである。

 

解釈は自由とのことなので、お言葉に甘えて思いっきり自由にイメージを膨らませている。

 

 

カカオ→チョコ→原産地が南米だったりアフリカ→それすなわちブラックミュージック……なんじゃないかと。

 

 

そこでふぁふぁ〜んと思い浮かんだのは、なぜかファンクだった。

 

 

カカオがファンク……

 

 

少々無理があるようでもあるが、いや待て全然無理ではないぞ。

 

 

と言いつつ、はたから見たら何でもありのようなセレクトになるだろう。
ファンクばかりにこだわらず、何だか「カカオ」な選曲が出来たらなと思う。

 

 

BAR CLOSED は18時オープン。
私は、20時半〜21時くらいから、1、2時間やる気満々です。
しかも、今の気分としてはターンテーブルは一台のみ使用。
ヘッドフォンもなしで、ブチブチ切りながら一曲一曲フルコーラスでと考えております。
もちろん全てレコードのみで。
うふふ。

 

 

なかなかのナイスな時間を保証いたしますので、タイミング合いましたら是非ともいらっしゃってください。

 

 

 

それではまた。

いつの間にかそうなっている

今日、パラパラと読んだ漫画に

 

「人間の脳は努力できる脳と努力できない脳の二つに分かれる。これは先天的な要素が強く精神論でどうなる問題ではない……」

 

 

と書いてあって、自分はきっと努力できない脳の方だろうなとぼんやりと思った。

 

 

その漫画では、それを判断する方法も示されたのだが、そういう実験だとわかったら、どうやっても努力できる脳だと判断されるように多少無理してでも頑張っちゃいそうだよなオレ……と思った。

 

 

そうなると、それはどっちの脳なのだろうか……ううむ……

 

 

 

そんなことを考えるのが私は好きである。

 

 

昨日、髪を切りに来てくれた川越のうどん屋と飲んだ。
そういえば、年末年始も一滴も酒を飲まなかったのだが、果たしてどれくらいぶりの飲酒だったのだろうか……

 

 

ああだこうだと他愛のない話をつらつらとして楽しかった。
思えば、彼との付き合いも随分と長くなった。
年齢は三つほど私の方が年長なのだが、この年齢になるともうそんなの差でもなんでも無くなって来ている。

 

 

若かりし頃は年齢差を気にしたものだが、それも年を重ねるごとにだんだんと気にしなくなった。
激変より、こういうちょっとずついつの間にか変化することが私は好きだ。
激変ってのは、なんだかちょっとわざとらしいというか、なんちゅうか本中華。
あれ?いつからこうだっけ?まいっか!

 

 

こういうのが、私は好きであ流。

 

 

肩肘張らずとか脱力だとか、意識しているうちはダメよね……と思う。
努力できる脳か……
そういう脳の持ち主の幸福度って高いのかなぁ。
その辺も漫画内で言及してくれると面白いんだけどな。

 

なんてことを、ぼんやり考えるのが私は好きだ。

 

 

股旅。