ロックと漫画は青春の武器だ

ぶらりと古本屋に入ったら、好コンディションの『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(花沢健吾著)の単行本全十巻が五百円で売っていたので、一瞬も迷わずゲットした。
そして空き時間を駆使し二日で読破。

 

連載当時以来だから十年ぶりに読んだことになるのだが、相変わらずどうしようもない最低の愛すべき登場人物たちに大いに心震わされた。
一切臆することもなく気持ち良いぐらいにあの名作『宮本から君へ』(新井英樹著)の完全パクリなのだが、それがまた良い、そこがまた良いというのが、この作品の凄さだと思う。

 

自分の記憶より急ぎ足の展開の早い物語に感じたのはなぜだろうか。
記憶していたラストと全く違っていたのはなぜだろうか。

 

「ロックと漫画は青春の武器だ」と誰かが叫んでいたが、読み終えて再認識。
青春なんてとうに終えた自分でさえもビシビシ実感できた。
銀杏BOYZ の峯田和伸主演で映画化もされているのだが、そのあまりのハマリ役具合に、峯田和伸がモデルなのでは?と思ってしまうほど。

 

先日、トーク番組に出ていた峯田和伸を見て、やはりその思いは増したし、昨年前にリリースされたシングル『エンジェルベイビー』がテーマ曲のようにすら聴こえて来る。

 

そうそう。
前述した『宮本から君へ』が、なぜかなぜだかいきなりテレビドラマ化されることになって胸躍らせている。
主人公、宮本浩を演じるのは池松壮亮、のちに宮本と結婚する中野靖子役は蒼井優ちゃん、宮本が信頼する先輩は松山ケンイチと凄まじい。
その他怒涛の出演陣に、さらにテンションが上がったのは言うまでもない。
監督は、勉強不足で知らない方なのだが、このキャスティングなのだから全く問題ないだろう。

 

ワンクールにつき、一作はドラマを観る。
そのドラマが放送される曜日が来るのを、次回を観るのを楽しみに待つっつーことが、自分が感じる幸福の基準の大きな一つなのであるが、次クールでは迷わず『宮本から君へ』に決まった。
おそらく伝説のドラマになる……はずだ。

 

この『宮本から君へ』なのだが、学生時代、友人の椎橋タクミが「これ面白いよ!」と貸してくれたのだが、ヘタレだった私はそのエネルギーに満ち満ちた作画と作風にやられ「いや、これオレ無理だわ……」と突き返したのを覚えている。
それが数年後には、人生においてもっとも重要な漫画になったっつーんだから人生って面白い。
そして俺って薄っぺらい。

 

ここまで『ボーイズ・オン・ザ・ラン』と『宮本から君へ』への熱い熱い思いを吐露してきたが、この二作品を「是非読んで欲しい!」と推薦する気は全く全然一つもこれっぽっちもないのはなぜだろうか。
それは多分漫画が青春の武器だからなのだと思う。
武器はそう簡単にひけらかしちゃダメだからね。

 

そんなわけで、次のお客さんがいらっしゃる前に銀杏BOYZの “ボーイズ・オン・ザ・ラン” を聴くとする。
この曲のPVが強烈なのだが、これもまた観ることを絶対オススメしない。

 

股旅。

でも、もう踊らない

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』のオープニングで ELO の “Mr. Blue Sky ” が流れ出したのには震えた。

 

僕はこの曲が大好きだったのだが、恥ずかしながら信じられないことにその曲名も歌っているのが誰なのかも知らないまま、ずっとずっと好きだったのだ。
変な例えになるが、毎日のように通っている道なのに「あれ?こんな家あったっけ?」と感じるような、そんな何故か何故だか認識されぬまま、でもちゃんとそこにある感じというか、ともかくそんな曲だったのだ。
この出会いを切っ掛けに、めでたくも曲名とアーティスト名を認識することとなったのだが、この時代、こんなに音楽好きを気取っていやがるようなスカした自分が、好きなくせに放っておいたっつー降って湧いたミラクルに、ちょっとだけ嬉しくなっている。

 

それにしても、どんだけイイ曲なんだろうか。
このキラキラ感 & ワクワク感。
なかなか得難い心の揺さぶられ具合だ。
ああ、気持ちイイ。

 

最近、気持ちイイ揺さぶられ感をもたらしてくれる音楽が他にも幾つかある。
Gregory Alan Isakov、Angus & Julia Stone、Sixto Diaz Rodriguez。
この御三方には、心震わされまくっている。
Sixto Diaz Rodriguez の名曲「Sugar Man」は、故ヒース・レジャーが出演した映画『キャンディ』の劇中で流れた瞬間、僕の脳髄から前立腺までパルスが走り抜けたのを覚えている。
興奮冷めやらぬまま、検索しまくってどうにか Sixto Diaz Rodriguez って人が歌っている「Sugar Man」って曲なのだというところまでは辿り着いたのだが、時折思い出してはYouTubeで聴いたりはしていたのだが、それ以上掘り下げることなく今に至っていた。

 

それが、急に目の前にドドーンと現れるから面白い。
これも、AI ちゃんの仕業である。

「こんな曲好きなんだったら、こんなのも好きなんじゃないか?どうだい?好きだろ?」

って感じで、次々と教えてくれるもんだから、全くもうキリがない。
そうして巡り巡って Sixto Diaz Rodriguez に辿り着いたのだから驚きである。
全てが繋がっているのだな……と感じた。
そして、自分の音の好み、自分の音楽の聴き方、音楽との向き合い方、それら全てがちゃんと繋がっていたのだ。
これはちょっとした自信になる。
己の中に、どこかにきちんとした筋道があるってことを証明してくれたような、そんな気がするのである。

 

Gregory Alan Isakovも、Angus & Julia Stoneも、教えてくれたのは AI ちゃんだった。
いやはやしかし、恐るべしなのは人工知能。
手のひらで踊らされいる感満載ではあるが、それはなかなか気持ちイイ。
でも、もう踊らないよ。

 

DOODLIN’ BARBER SHOP 店主 高崎 哲平

全てはタイミング

相変わらず月日が経つのは滅法早いもので、いつの間にやら三月半ば。
日も長くなったし、この時間に日記を認めていても暖房なしでいけるようになりました。
花粉が舞い、草花たちが芽吹き始めると息子の誕生日も間近。
これまた猛烈に早いもので五歳になります。
しみじみ。

 

ここ最近、お久しぶりのお客様からの嬉しい御連絡が相次ぎました。
新店舗でカットするのは初って方ばかりなので、最短でも三年ぶりとなりますかね。
石の上にも三年……と言う言葉があるように、いろいろ様々な人の気持ちの移ろいというものは三年は必要なのかもしれないですね。

 

そんなわけで、今年の六月で新天地に移転して三年となります。
そうなるとやはりいろいろとテコ入れしないといかんなと業者の方の助力も得て、仕事の幅と奥行きも拡張しようと企んでおります。
暖かくなってきたので、ポーチの塗装もせねば。
制作中の新Tシャツも新境地を目指さねば。
何か新しいことにチャレンジもせねば。
それと運動不足の解消、これ大事。
心身を鍛え直さねばな。

 

2018年。
5月には晴れて47歳。
今年はそういうタイミングなのだと自覚しようと思います。

 

DOODLIN’ BARBER SHOP 店主 高崎 哲平

好きの向こう側には何がある

今年で四十七歳になるというのに、私は未だにクリームパンが好きだ。
幼稚園に通っていた頃にはしっかりとクリームパンが好きだったという記憶があるので、もうあれこれ四十年以上にもなるクリームパン好き人生である。

 

子供の頃に好きだった物事は大人になっても、そのまま好きなことが多いと感じる。
叔父の結婚式の披露宴で、甘エビを知らないおじさんおばさんにまで「頂戴!」とせがんだことを覚えているが、あれは三歳ぐらいのこと。
幼稚園の年長の頃にはビートルズの “Ob-La-Di, Ob-La-Da” が好きだった記憶があるが、ビートルズも甘エビも未だに大好きなままだ。

他にもいろいろたくさん幼少時から好きなものがあるが、今挙げたクリームパン、ビートルズ、甘エビは間違いなく死ぬまで好きだと思う。
嫌いになるかもしれないなんて要素は全くナッシングだ。

 

「好き」って大事だ。
そしてとても素敵だ。
もしかしたら、私は「好き」に囲まれたくて、この仕事を選んだのかも知れない。
私は髪を切るのが好きだし、人と話すのも好きなのだろう。
文章を書くのも好きだし、Tシャツを作るのも好きだ。
好きな服装で、好きな音楽流して、好きなものを店内に飾って、もう何もかもスースキスーだ。

 

かといって、俺は嫌いなことはしないタチなんだぜ〜などとふんぞり返って嘯く気はサラサラない。
嫌いなことがあるからこそ「好き」が輝くっつーもんである。
今後の人生、どれだけ「好き」が増やせるか……
それはある意味「幸福」の指標になるかも知れないなとぼんやりと思う。

 

どうでもイイ話に感じるかもだが、今の私にとっては甚だ重要なことなので書いてみた。

そこには大抵意味があったりするものだ

ただいま当店では通算五十数回目となる TODD RUNDGREN ブームが訪れております。
もちろん店内ではヘビーローテーション。
僕の脳内でも幻聴のようにずっと鳴り響いているのです。
嬉しいのは、結構な数のお客さん方が「お!トッド・ラングレン!」と気づかれることです。
僕が生まれた翌年、1972年に発表されたアルバム『Something/Anything?』。
つまり四十六年前に遠く米国で作られた音楽が、極東のしかも郊外の場末にある床屋でさらりと流されて「お!イイね!」だなんて感銘を与えていると云うスペクタクル。
想像すると凄いことですよね。

 

昨夜は新所沢の公民館的酒場 HOBO’s までお出かけ。
友人のハセドン(名店『手打うどん長谷沼』店主)とアラヤン(僕が大好きな絵を描く画人)と会合。
HOBO’s 店主の三木先輩(僕の通った中学の二個上先輩)も交え、楽しい話が咲き乱れました。

 

楽しい話をしている間にも、僕の脳内ではトッド・ラングレンが鳴り続けていてちょっと困りました。
三木先輩が流してくれる、竹原ピストルや踊ろうマチルダが遠くで聴こえてしまうぐらいに。
でも、これにもきっと意味があるに違いない。

さてと。
次のマイブームは何かしら。
先日観始めた映画『ムーンライト』がとても面白かったので続きを観るのが楽しみなんだったんだ。
それからいろいろ待ち受けている本もある。
新作Tシャツの制作にも着手したし、どうやらまだまだいっぱいワクワク出来そうだ。

 

股旅。