いつの間にかそうなっている

年を重ねるにつれて、蚊に刺されても反応しなくなるのだよ……
 
 
こう言うと「んなまさか!またまた〜笑」みたいな反応をされることが多いのだが、これは厳然たる事実なのである。
 
 
幼少時に比べて蚊に刺されてもダメージ少なくなったよな〜と思いつつ、でも気のせいかなと私も思っていたのだが、息子の『危険生物図鑑』に
 
「赤ちゃんや幼児はゆっくり痒くなり、蚊に刺される回数が多くなるにしたがって、すぐに痒くなっていく。毎年、蚊に刺されながら年を重ねると、やがて反応も出なくなるんだぜ……」
 
と書いてあるのを見て「こ、これだっ!」と膝を叩きまくってしまったんだった。
 
 
うちの息子も、二、三歳の頃は刺されたその日は何でもなく、翌日にプクーッと赤く腫れ始めていた。
こんな腫れちゃって大丈夫なの?と心配したが、六歳になった今は、赤ちゃんの頃ほどは腫れない。
徐々に徐々に耐性がついてきているってことなのだ。
 
 
四十八歳である私は、蚊に刺されて「痒いぜ!」と悶えることもたまにあるが、それも束の間。
小一時間も経てば、痒みも赤みも一切の痕跡がマジックのようになくなっている。
十年、二十年後には、刺されても全く何も感じない超人になっていることだろう。
 
 
 
年を重ねてなくなったことが他にもある。
魚の骨が喉に刺さることがなくなったのだ。
幼少時はバッシバシ刺さった記憶がある。
それが今や全くナッシング。
これは経験により学び、刺さってしまう恐れのある魚骨を、目視で排除したり、口内で上手に捌けるようになったのであろうとも推測できるが、何より成長して喉の幅が大きくなり通過しやすくなったことが、その大きな理由であろう。
 
 
だから、ガッツガツ急いで白米を食べても喉につかえることも大人になってからいつの間にかなくなったのだなと推測される。
これまた幼少時はしょっちゅうつかえていたのを覚えている。
 
 
 
これらは「今まさにこの瞬間!」と自覚することなく、いつの間にか変化していったものだ。
きっと他にもそのようなことが多々あるのだろう。
 
 
 
いつの間にかそうなっている……
 
 
 
これもまた一つの幸福の形なのだろうな……
 
 
 
だなんて、よくわからないことをぼんやり考えている月曜日の朝である。
一昨日の土曜日に行われた息子の運動会は楽しかった。
子供達が一生懸命に走る姿を見るだけで、こみ上げるものがあった。
涙もろくなったものである。
 
 
「最後の運動会が終わっちゃったよ……」
 
息子が寂しそうにそう呟くのである。
 
「最後じゃないよ。小学校の運動会はまだあと5回もあるよ」
 
と私が言うと
 
「違うんだよ……一年生の運動会はもうないんだよ……」
 
と返された。
 
 
私はハッとしてグッときたんだった。
息子よ。
父さんは、その考え方を見習いたいと思ったぜ。
 
 
息子もまた、いつの間にかそういう感性を身につけていたんだった。
 
 
 
よしよし。

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